OTC薬協刷新懇談会

OTC薬協刷新懇談会はOTC薬協の事業をみんなで考える会です

セルフメディケーション推進に関する有識者検討会について

2月3日に第1回セルフメディケーション推進に関する有識者検討会が開催され、OTC薬協からも黒川理事長が出席されました。

残念ながら傍聴が記者に限られていてできなかったのですが、2月3日のドラビズon-lineに詳細に会議の様子が掲載されていましたので、その情報と、OTC薬協から提出された「黒川構成員提出資料」を基にコメントをしたいと思います。

余談になりますが、ドラビズon-lineは、色々とある業界紙の中でもon-lineという特性を生かし、特に審議会や検討会などの報道が、紙面量を気にすることなく必要十分な情報を掲載されていることや、記者のコメントが中立で核心をついていることより、日ごろ参考にさせていただいています。ドラビズon-lineはドラッグストアと薬局のビジネスマガジンとなっていますが、 OTC薬協関係の皆さんも参考にされたらいかがですか。

さて本題です。

有識者検討会の開催目的は、12月21日に閣議決定された税制改正大綱で、セルフメディケーション税制の対象の検討と療養の給付に要する費用の適正化効果の検証方法です。まず、3月中に対象を決定し、その後医療費削減効果等の検証方法が検討されるようです。

今回の有識者検討会で一番違和感を覚えたことは、ドラビズon-lineの記者コメントにも同じような視点で問題提起されていますが、生活者不在です。税制改正大綱が出された時も同じ違和感を覚えましたが、セルフメディケーション税制に医療費削減効果を求めたということは、セルフメディケーションは医療とトレードオフの関係にあるとの考えです。セルフメディケーションが進めば、医療費が削減でき、国民皆保険も守れるとの考えです。この中には生活者の視点で、セルフメディケーションを行うことの意義が示されていません。本来はOTC薬協がその役目を担うべきと思います。OTC薬協の資料「黒川構成員提出資料」総論1-①には、セルフメディケーションの意義として「疾病の予防・早期発見・早期対処・重症化予防によって、国民の健康寿命を延伸することができる。」と記載されていますが、この主張に関しては2019年9月13日のブログ「健康寿命の延伸はセルフメディケーションでは不可能」で記載したとおりです。今あるOTC薬の中で、どの製品がこれに当たるかを示してほしいものです。「セルフメディケーション健康寿命を延伸」のお題目を唱えるだけでは、物事は進んでゆきません。

また、この資料では、セルフメディケーションの意義として「国民の行動変容を促し、限りある医療資源を有効活用することで、社会保障制度を維持することが可能となる。」と主張しています。さらに税制によりOTC医薬品の使用促進を図るべき領域の「あるべき姿に向けた今般のステップ」で、「代替性」や「市場の大きい薬効」など、まさに「セルフメディケーションは医療とトレードオフの関係」を主張しています。税制改正大綱の議論に乗ることは、セルフメディケーションの範囲を広げ、業界の売り上げを伸ばすために絶好のチャンスと考えていることは明白に見えています。生活者不在の議論をさせた国も国ですが、それにOTC薬の売上だけを考えて乗ってゆくOTC薬協も問題です。

今回の有識者検討会は初回ですので、参加者はそれぞれの立場で言いたいことを言った感がありますが、日本医師会の宮川氏は、時間軸の問題を提起し、セルフメディケーションに用いられるOTC医薬品は「短期間の使用」、「自覚症状により使用・使用中止の判断が自分で行える」、「安全に使用できるものであるべき」との、従来の医師会の主張に基づきくぎを刺しています。最後に座長の菅原氏が「自覚症状に応じて服薬の開始などが安全・容易にできるものが拡大に適切」と有識者の多くから意見が出された安全性の視点の重要性についてコメントがなされています。セルフメディケーションはその有効性、安全性、利便性で真に生活者のメリットとならなくてはいけないと考えていますので、健康寿命の延伸などの誇大妄想ではなく、生活者の日常のQOL改善にどれだけつながっているかのエビデンスを提示できる会議であってほしいと思います。

次回の有識者検討会は3月に開催され、対象候補リスト案が提示される見込みのようですが、当然日本医師会は反対の意見を出してくることが予想されますので、どのようにOTC薬協が理論構築し反論するか見ものです。

スイッチOTC以外の薬効の対象拡大は、OTC薬協から要望を出した4つの症状群、①かぜの諸症状、②耳鼻、アレルギーの諸症状、③胃腸の諸症状、④肩・腰等の腫れ・痛み、湿疹・かゆみの症状をもとに議論されることが予想されていますが、かぜの諸症状については、今回の議論などを見ると認められる方向にあると見えます。しかし、かぜの諸症状が認められても、五十嵐参考人の試算のように403億円医療費が減少し、OTC医薬品市場が伸びることは、現実には起こりえないと考えています。これについては後日記載したいと思います。

いずれにしても、今回の有識者会議ではドラビズon-lineの記者が、「OTC医薬品セルフメディケーションの価値が医療費適正化というものに矮小化して認識してしまう人が出ないかが心配だ。」と危惧していますが、OTC薬協はセルフメディケーションは医療とトレードオフだと言わんばかりのことを、自ら行っているのですから、「セルフメディケーションの価値は医療費削減に限定された小さな価値しかありません。」と言われても仕方ないですね。救いようがないです。