OTC薬協刷新懇談会

OTC薬協刷新懇談会はOTC薬協の事業をみんなで考える会です

日本OTC医薬品協会 年頭記者会見について

OTC薬協は1月12日に佐藤会長の記者会見を開き、資料や映像もホームページにアップされましたので、それを確認して意見を述べさせていただきます。

いくつか事実と違っているなという点がありましたので、まず指摘を。

セルフメディケーション税制」については、「対象品目の拡大も認められております。」と言っていますが、皆さんご存じの通り、正確には「医療費抑制効果が著しく高い製品は3薬効程度新たに対象に追加」をこれから「セルフメディケーション推進に関する有識者検討会」を開催して検討するとのことです。決まったわけではありませんし、そのハードルが高いことは以前のブログに述べたとおりです。もしかして裏取引でもあります?勘繰りたくなります。

さらに、12月24日開催の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で取り上げられた、「医師の管理下で状態が安定しており、対処方法が確定していて自己管理が可能な症状に対する医薬品」のスイッチOTCについては、佐藤会長は「新たな範囲はほぼそのまま反映され、受け入れていただいたものと考えています。」と述べていますが、これも決定したわけではなく、これからの課題です。余談ですが、「医師の管理下で状態が安定しており、対処方法が確定していて自己管理が可能な症状に対する医薬品」の「対処方法」くだりを、佐藤会長は何度も言い直していましたが、主張の内容を理解されていますか?疑いたくなります。

「医師の管理下で状態が安定しており、対処方法が確定していて自己管理が可能な症状に対する医薬品」のスイッチOTC化に関しては、今後物議を醸しだしそうで、嫌な予感がします。「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」の「中間とりまとめ案」には続けて、「各ステークホルダーの連携等の更なる環境の整備の状況も踏まえつつ」と述べられており、この会議で議論されている医師、薬剤師等の各ステークホルダーの情報共有等を介した連携による適正使用、適正販売の促進が前提だと規定されています。そんなに簡単な話ではないです。

しかも、OTC薬協はこの「医師の管理下で状態が安定しており、対処方法が確定していて自己管理が可能な症状に対する医薬品」のスイッチOTC化は、「多忙な人は、新しいスイッチOTCの恩恵に浴する」として、サラリーマンの機会コストを下げることが、大きなメリットのように主張しています。しかし、その一方で、佐藤会長は会見で「かかりつけ医など専門医のチェックを受けられるシステムの構築が必要」と述べていて、薬は薬局などで購入し、服薬した効果や安全性は今まで通り医療でフォローする必要があると聞こえてきて、機会コストを下げるはずが、逆に上げかねないとの印象を受けます。制度設計はきちんとできているのでしょうか。しかし佐藤会長は、これら環境整備も同時に進める必要性を述べられていますので、推進するつもりはあるのでしょうね。医師や薬剤師の連携やそれらを含めた社会システムの構築を、OTC薬協がどのように推進するのか見ものです。

さらに、医師会の長島氏は同会議で、「状態とは自分で判断できる状態なのかどうか、例えば検査結果、あるいは自分で判断してよいものなのかどうか、対処方法が確定するとはどういう意味なのかというところでかなり状況は薬物によって違うので、これは申請が上がってきたら一つ一つ丁寧に議論すべき。考え方で整理するのは重要だが、一つ一つの成分には個別性もあるため、丁寧に議論し、建設的な結果につながるように議論することが重要だと思っている」と述べ、これは、「このカテゴリーのスイッチOTC化の討議は薬食審で。」と暗に言っていることは明白です。薬食審に諮られると、医師の管理下での処方で長期間状態が安定しているという「状態」が問題となり、それを生活者自身で判断できるかとの議論がされ、スイッチOTC化不可となるのは明白です。このような状況になることは、佐藤会長も言っていますが「(評価検討会議は)スイッチの可否を議論するのではなく、厚労大臣に意見具申する場であることが確認されたことについては協会の要望が取り入れられたとした。」と述べていて、最終は薬食審に諮ることは、自ら望んだことですので、自業自得としか言いようがありません。

「医師の管理下で状態が安定しており、対処方法が確定していて自己管理が可能な症状に対する医薬品」のスイッチOTC化は、一部業界紙も指摘しているように、「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」でもほとんど議論されていません。OTC薬協は高血圧症を念頭にこの案を投げ込んだのでしょうが、今のタイミングでこの案を投げ込むことは、医師会のスイッチOTC化への態度をさらに硬直化させ、セルフメディケーション税制の範囲拡大にも影響を与えかねない問題だと感じるのは私だけでしょうか。もうやってしまったことですので、頑張って医師会と議論してくださいとしか言いようがないですが。

また、この会見では、ヘルスリテラシーの向上のため、①医師や薬剤師の連携、②学校教育、③情報提供が必要と言っていますが、①はスイッチ評価検討会議中間とりまとめ案においても、「スイッチ促進のためには、メーカーや薬局開設者、薬剤師、医師、国民といった各ステークホルダーの「連携」が重要」と指摘されています。これに関しては前に述べたようにOTC薬協としてどのように取り組むのか見ものです。記者会見で話したのですから、全く案がないということはないでしょうね。②もどのように取り組むのかわかりませんが、今ある「セルフメディケーションハンドブック」や学校補助教材があると言って、お茶を濁すようなことはないでしょうね。③はOTC医薬品メーカーの団体として、使用者にさらにわかりやすい情報提供考えることは責務だと思いますので、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。でもこれら取り組みでヘルスリテラシーが向上するとは思えませんが。

最後に、会見の間中、佐藤会長が右斜め上の原稿を棒読みしている姿が気になりました。OTC薬協の年頭記者会見ですので、今年1年OTC薬協はこのような活動をやってゆくんだとの意気込みを、自身の言葉で発信してほしかったですね。最近どこかで聞いたような指摘ですが。