OTC薬協刷新懇談会

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令和3年度税制改正大綱について

しばらくブログをアップすることを訳あって控えていましたが、本日自民党税制調査会で令和3年度税制改正大綱が決定され、セルフメディケーション税制についても記載されましたので、ブログを掲載することにしました。ある読者の方から、なぜ最近ブログをアップしないのかとお叱りも受けましたが、決してサボっていたわけではありません。

https://www.jimin.jp/news/policy/200955.html

以前ブログで「セルフメディケーション税制は国も行政もCOVID 19対応で大変な中、こんなshabbyな税制に時間を取られる事はしたくないでしょうから、誰も注目せず、変えることも潰すことも手間なので、再度期間延長で継続されるが私の予想です。」と記載しましたが、予想はほぼあっていました。結果としての予想はほぼあっていたのですが、税制の対象の縮小と再延長は無いという布石まで打たれてしましました。これには驚きました。

令和3年度税制改正大綱の中心は、予想通り、新型コロナウイルス感染拡大による景気悪化に対応するため、住宅ローン減税やエコカー減税など、個人消費を増やす目的の減税と、国が目指すデジタル社会、グリーン社会への投資が中心です。

その中でセルフメディケーション税制は「経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し」の項目で記載されています。今年7月17日閣議決定された「規制改革実施計画」で一般用医薬品(スイッチOTC)選択肢の拡大が求められましたので、そのおかげでセルフメディケーション税制は土俵際で残ったと言えると思います。

土俵際で残ったことをもってOTC薬協では最低限の成果は上げたと評価するかもしれません。さらに勘違いで「3薬効程度対象が拡大されそうだ」とか「健康診査等の書類の添付が不要となって、要望通り手続きの簡素化が図られた」と喜んでいる能天気な方がいるかもしれません。

しかし、よく税制改正大綱を読んでください。

セルフメディケーション税制については、税制改正大綱の16ページと33ページに記載があり、概要は下記の通りです。

1.5年延長し、本制度の効果検証を行う

2.対象製品のうち、効果の低いものは対象から除外

3.医療費抑制効果が著しく高い製品は3薬効程度新たに対象に追加

4.健診等の書類提出は不要

1.については、5年間でデータを集めて議論し、効果が認められないと再延長は無くなるということを示しています。ではだれがKPI設定を行い、検証の計画を立て、実際に効果検証を実行するのですか?財務省ですか?厚労省ですか?財務省厚労省が実施するわけはないですよね。当然行うのは業界ですし、しかも効果検証は明確に「費用の適正化の効果」と明記されています。これを行おうとすると最低3年間の期間と、少なく見積もっても数千万円、下手すると億を超える費用が必要です。これはやりようはあるにしても、あまりにも大きな宿題を突き付けられたと言うしかないと思います。以前からこのブログでも主張しているようにこの税制改革要望のためには「税制においても、国民のため、国のため、そして産業界活性のために役立つことが理論的に説明できているか」の視点が必要で、理論的に説明するためには、どうしてもエビデンスが必要だと主張しています。今回は真っ向から国からエビデンスが要望されたと言うことです。考えている暇はありませんので、危機感をもってすぐにプロジェクトを立ち上げ、効果検証を行う準備に入った方が良いと思います。

2.と3.については、よく文章を読んでみてください。除外する方は「効果が低い」と表現されているのに対し、加える方は「効果が著しく高い」とされています。しかも加えるほうには「3薬効程度」とリミテーションが掛かっています。明らかに除外する品目はハードルが低く、加えるほうはハードルが高くなっています。いわゆる霞が関文学の文脈で考えると、適応対象範囲は効果がある薬効だけに絞り、全体としては縮小するとの意思表示です。さらに、「その具体的内容等については専門的な知見も活用し決定する」と記載されています。「専門的な知見」はだれが持っているのですか?当然日本医師会が関与してこの税制の対象範囲が決められることを示しています。OTC薬協が意見表明できる機会があるとしても、医師会と議論してロジカルにその必要性を主張しなければなりません。これもすぐにプロジェクト化して、評価モデルを考え、シミュレーションを実行し、理論武装すべきです。そうしないと医師会のシンクタンクである日医総研に、簡単にねじ伏せられます。

4.は業界の要望に配慮したというより、行政手続きの電子化、簡素化の流れに沿ったものと考えるのが適切です。今回の税制改正大綱においても「税制においても、国民の利便性や生産性向上の観点から、わが国社会のDXの取り組みを強力に推進する」と述べられており、ほかの税制でも同じように手続きの簡素化がうたわれています。

税制改正大綱を読んで、考えられることを述べました。

今回の改正に危機感を持って臨まないと、セルフメディケーション税制は終わりを迎えます。OTC薬協自身で頑張るか、それともOTC薬協で対応が無理だと認識したら、セルフケア税制に包括してほしいとお願いしたらどうですか。その方が確実にOTC薬の税制は残ります。