OTC薬協刷新懇談会

OTC薬協刷新懇談会はOTC薬協の事業をみんなで考える会です

東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の会長問題などをみて組織の問題を考える

最近組織の運営を考えさせられる2つの出来事がありましたので、コメントさせていただきます。

まずは2月3日の日本オリンピック委員会臨時評議員会における、東京オリンピックパラリンピック大会組織委員会森会長の女性軽視ととられる発言を発端とする問題です。この発言はマスコミで大きく取り上げられ、翌日4日の記者会見で、森会長は発言を謝罪し撤回すると述べましたが、辞任は否定しました。その後世論から辞任しないことに対し非難を受け、12日に開かれた組織委員会の理事と評議員による緊急の会合で辞任する考えを表明しました。その後混乱に拍車をかけたのが、森氏主導による後任選びの動きで、不透明な後継指名の経緯に再度世論の非難が集まり白紙撤回になりました。その後、組織委員会は候補者検討委員会を設置し、後継者選びに入りましたが、後任が決まるまで検討委員会のメンバーや選考過程を公表しないとしている組織委員会の方針は不透明ではないかとこちらにも世論から非難が集まりました。最終的には橋本前五輪相が会長就任でひとまず決着した形となりました。

しかしこの一連の騒動の裏には、利権や権力争いがあり、本音と建前が入り乱れ、五輪の精神を無視し、五輪の舞台を私物化、政治闘争化しているとの報道がされています。また、就任した橋本氏に関しては、就任に対し首相の意向が強く反映されたとの指摘と、その理由として「自分の言うことを聞いてくれるから」とされ、唯々諾々と官邸の意向に従うのではないかと報道されています。さらに森前会長の後任選びが迷走したのは組織委員会の「人材不足」が原因との報道も多くみられます。

ここまで読まれて多くの方が既視感を感じられたのではないでしょうか。まるでOTC薬協で行われているようなことが、オリンピック組織委員会という舞台で行われているという。違いはオリンピック組織委員会の出来事には大衆の興味があり、マスコミも大きく報道しましたが、OTC薬協には誰も興味を持ってくれないことでしょう。

しかし両方の組織ともに私が以前このブログで指摘したように「(OTC薬協は)業界団体ですので、業界の発展のため様々な観点の事業を行うことが本来の目的ですが、最近オープンな議論がなく一部幹部により密室で物事が決まったり、全く筋の通らない公私混同が行われたり・・・・。」がまさに行われています。OTC薬協に所属している役員の皆さんは、オリンピック組織委員会は大事になったが、OTC薬協は世間から注目されていないので内部で何をやっても大丈夫と、たかをくくっているのでしょうか。このような状況を組織に放置しておくと、そのうち大変なことになります。

 もう一つは旭川医科大学で、吉田学長の新型コロナウイルスに関する不適切な発言から、コロナ患者受け入れを巡る学長と旭川医大病院長との対立が相次いで明らかになった問題です。

院長の古川氏はこの対立の中で吉田学長より1月25日に解任され、その解任理由は、大学運営会議の内容を外部に漏洩したことでした。報道によると、長期政権による大学の私物化、ガバナンスの崩壊が根底にあるとされています。さらにこの問題は学長の辞職を求める学内の署名活動にまで発展しています。この署名活動「大学の正常化を求める会」の発起人になった、旭川医大緩和ケア診療部准教授阿部泰之氏はM3.comのインタビューに以下のように答えています。

組織の問題に対しての質問に対しては、「どんな組織でも、問題は抱えていると思います。しかし、「おかしい」となかなか声を上げないというか、声を上げること自体に思い付かないことも多い。今回の我々の活動が、「おかしい」と思った時に、声を上げるきっかけになってくれればと思っています。そもそも声を上げることに、勇気が必要なこと自体、問題があると言えます。」。また、正常化の目標の質問には、「第一は透明化です。先ほどもお話ししましたが、学長選考会議の動きも、教職員に説明されていません。もちろん、大学にも機密情報もありますが、それ以外には基本的にはオープンにすべきです。決定までは秘密裏に進める場合でも、その後に公開し、決定プロセスが妥当だったのか検証できるようにする。そうすればチェック機構が働き、組織はおのずから変わっていきます。」と答えています。

組織の内部にこのような良識のある方がいれば、組織は立ち直れる可能性があると感じた事例でした。

オリンピック組織委員会の問題は森前会長の発言以上に大きな問題を抱えていると思います。それは「傍観者」としの責任逃れだと思います。今回の森前会長の発言の際、笑いが起きたとの証言があることが報道されており、問題を指摘しなかった同席者は森前会長と同罪との指摘もなされています。傍観者であれば責任がないとの考えは、すでに今の社会では通じない考えだということを如実に表しています。

マーガレット・ヘファーナンの著書に「見て見ぬふりをする社会」という本があります。この本では企業の不正、児童虐待や人災事故リスクなどに直面しても、「見て見ぬふり」をするメカニズムとして、波風を立てたくないや決断をしたくないなどの心理からくる「傍観者」としての態度を脳科学や社会関係学などをもとに分析した書籍です。この本を読んで一度わが身に照らし合わせてみてください。愕然とすると思います。正義や信念を貫くことが人としての道を外れないことだと思います。OTC薬協の役員の皆さんにその覚悟はありますか。