OTC薬協刷新懇談会

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セルフメディケーション税制改正の重大なチャンスを逃した気がします

前のブログで骨太方針2020年の話をしましたが、7月17日の閣議で骨太方針2020年は決定されました。決定された骨太方針にもしっかりと原案通り「一般用医薬品等の普及などによるセルフメディケーションを推進する。」と記載されました。しかし、前のブログでも記載したように今年の骨太方針2020年は異例です。

これを象徴するように新聞各紙は記事見出しで、日経が「役割終えたか骨太方針の20年」や「総花的で言いっ放しの骨太なら要らぬ」と、また朝日は「骨太方針原案存在意義が疑われる」と手厳しい評価をくだしています。各紙とも、新型コロナウイルスの感染拡大で社会が大きく変わろうとしているのに対し、政府として明確な道筋を示していないとの非難です。

この流れを考えると、従来の骨太方針に対する業界の理解、つまり、「骨太方針に書き込めば予算を確保できる。」という経験則は、おそらく今年は当てはまらないと思います。今年の骨太方針は残念ながら「新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、明確な今後の方針」というよりは、「各省庁に配慮して既存施策の多くがそのまま盛り込まれ、結果として総花的な施策が残ってしまった」とみるほうが正しいと思います。しかし、実際の予算立案に際しては、総花的な政策に対し予算付けができるほど財政的な余裕は無いとみるのが普通です。「セルフメディケーションを推進」は明らかに総花的な政策の一つです。骨太方針には掲載されましたが、全く実効力はないと思います。

これから政府の政策として、新型コロナウイルス感染対策(感染拡大防止や医療提供体制の確保など)をとりながら、経済を回していくための「新たな日常」を実現することが求められていますが、業界としてもこのコンテキストに沿った政策を提言できないと、全く相手にもされないと考えています。

セルフメディケーション税制を改革するヒントとして、これも日経新聞の7月22日朝刊の「私見卓見」に寄稿された、株式会社 法研代表者東島俊一氏の主張のように、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、健康の維持のためセルフメディケーション税制に、予防接種や定期健診、さらにはスポーツクラブなども含める提言のように、喫緊の問題に対する解決策としての対応を提言しなければ、国が求める提言からは大きく外れています。国や国民のためになる提言でないと取り上げられるはずがありません。同じ意味合いで、7月22日の日刊薬業電子版に掲載された、日本セルフケア推進協議会からの「セルフケア税制の提案」も同様の趣旨の提案ですので、皆さんもよく、その提言内容を研究されたらいかがですか?いかにOTC薬協で考えていたセルフメディケーション税制改正提言が、陳腐で旧態然として意味のない提言であるかが、解ると思います。

5月13日のブログで、新型コロナウイルス感染症を受け、医療崩壊を招かないために、自分の健康を自分で守るセルフケアをどのように社会実装できるか。それをデザインし実行に移す必要があるという趣旨で記載しましたが、業界団体は、そのような観点で、現在の社会が抱える問題点の解決とともに、さらに業界の発展も図ってゆく政策提言ができないと、その使命を果たしていないと言えるでしょう。

7月17日にはセルフメディケーション税制で、対象医薬品を全てのOTCに拡大すること、手続きの簡素化、控除額の拡大、制度の恒久化を、2021年度税制改正要望として加藤厚生大臣あて提出したとのことですが、昨年から全く変わらない要望書を出して、それで満足しているOTC協会に対し、皆さんはそれで良いと思っていますか?新型コロナウイルス感染症への対応が最重要課題として求められている中、このような意味のない提言を、恥ずかしくもなく提出すること自体、セルフメディケーション税制改正の重大なチャンスを逃していることに気が付きませんか?